* 月組 / 霧矢大夢・城咲あい・月船さらら・紫城るい / 日本青年館 / 2004-05
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熱く激しい(そしてやっかいな)女性に悩まされる男性の図。ひたすら女性のことを考えている主人公。印象強かったのは若菜さん。さららんの前髪が良い。とても良い。
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第二次世界大戦の時代のお話ですし、ナチスだし(先生はこの時代が好きなのでしょうね…)、どよーんとした内容なのだろうなあ、と思っておりましたが。
意外に爽やか。…明るい音楽を唐突に挟んで、ムリヤリ明るくしているような気もいたしましたが、ずーっと暗いよりは良いのではないかと。
フランスに赴任したある日本人将校の女性遍歴。…ってことで良いんでしょうか。ともかく何というか…思い込みの激しい女に悩まされる男、よくわからない説明役の明るく陽気なキャラ、想いが報われない切ない女(もしくは男)、親の仇を愛する女、などなど、どこかで見たような設定が断続的に繰り出されるのが齋藤先生の手口(?)です。いや、キライじゃないんですよねぇ。あくまでも自分の趣味を前面に押し出してくる姿勢は尊敬すべきものがあります。なんて偉そうに言ってみたりして。
遠藤和実 (霧矢さん)
フランスの日本大使館に勤める軍人さん。彼にはトラウマがありました。昔、婚約していた女性が自分を捨て自分の親友を選んでしまったという出来事が。それ以来、「誰も愛さない」と心に決めたのです。
が、ある出来事で知り合った女性と恋に落ち、最終的には一応ハッピーエンド。良かったのう…。
あまり劇中楽しいことがないので、ひたすら神妙な顔をなさっている…。仕方ないことなのですが、フィナーレの笑顔がとても良かった。きりやんの笑顔が大好きです。
歌はさすがに聞かせてくれました。曲も耳に残りますし。
では、和実さんの女性遍歴を追ってみましょう。
ジョセフィーヌ(城咲さん)
和実が勤務中に誤って殺してしまった男性の娘。お互い惹かれあいますが、和実は事実(父を殺したのが自分だということ)を黙っていることが耐えがたくなり、ジョセフィーヌに正直に話します。彼女はショックを受けて、和実を突き放します。
ジョセフィーヌには、5年間帰りを待ち続けている恋人ミシェルがいました。和実が衝撃の事実を告げたすぐあとに、なんとタイミングよくミシェルが彼女の前に現れたのです。従軍していたミシェルは、乗った船が沈んで何だかんだでアメリカにいたのです。自分の書いた詩が映画化されることになり、その映画に、主役として出演して欲しいと言いにやってきたのでした。
「なんで連絡してくれなかったの」
というジョセフィーヌのセリフを軽やかにかわして
「一緒にアメリカに来てくれ」
と誘うミシェル。何故答えてやらんのだ。
ジョセフィーヌは、和実が父を殺害したときの状況(故意ではなく、仲裁に入ろうとして誤って銃を発射してしまったのだということ)を何故か知っていました。何でも知っています彼女は。でも、ミシェルとアメリカに渡ることを決意した彼女は、自分が持っているブルーダイヤ(金銀パールプレゼント)を和実に贈り、去っていきます。
その後、アメリカのトップ女優となったジョセフィーヌでしたが、戦後、和実が彼女の父殺害とブルーダイヤ窃盗の容疑で裁判にかけられていることを知り、「彼を救えるのは君しかいない」というミシェルの言葉もあり、彼女は日本へと旅立つのでした。
大人っぽい雰囲気の方ですので、今回の若いが落ち着いた娘さん役というのは、とても合っていたのではないかと。
川島芳子(紫城さん)
満州に居る女スパイ。何故だかよくわからないが、会う前から和実のことが気になって仕方なかったようです。
謎な占い師さんの助言を信じ、和実に「ブルーダイヤを入手せよ」という指令を与えたお方です。占い師さんの言ううさんくさい伝説(ブルーダイヤとエメラルドタブレットが一緒になったとき王朝に奇跡をもたらす)を実現させるのが夢でした。狂気っぽい雰囲気でもありました。…というか、かなりいっちゃってました。
激しくエキセントリックなお方です。そして守備範囲は相当広いようです。両刀使いというか節操なしというか(おっとっと) 麗河さんとデュエットダンスを踊ったり、若菜さんに甘いくちづけを施したり、結構やりたい放題ですが、本命はやっぱり和実だったようです。
最後、戦況不利になって自分の立場も危うくなったとき、彼女の歪んだ愛は“和実の目に剣で斬りつける”という行動を起こさせました。そのまま自分の腹に剣を突き立てるのかと思いましたがそうではなかった…。あの勢いならばそこまでやって欲しかったかもしれない。
「ジェラシー感じちゃうネ」
「あーーはっはっは!」
一人称「ボク」!
二人称「キミ」!
女の子に軍服! そしてショートカット!
たまらん…のでしょうなぁ(齋藤先生が)
一之宮若菜(夏河さん)
和実のトラウマの元。和実という婚約者がありながら、家のためにお金持ちの別の人のもとに嫁ぎました。
「若菜は、家のために関根さん(結婚相手の名)のもとにまいります!」
しかし、関根さんは事業に失敗して自殺し、若菜さんは1人取り残されてしまったのでした。頼る人が居なくなってしまった若菜さんは、はるばるパリの和実のところへやってきます。
「私たち、まだ終わっていないわ!
和実さんのことを、片時も忘れたことはなかった!」
…なんてムシの良いお方。
残念ながら和実は、既にジョセフィーヌとのロマンスが進行中だったので、「厄介なのが来た」ぐらいにしか思っておりません(たぶん) 部下を使って追っ払います。ショックを受けた若菜さんは、捨てゼリフを残して去っていきます。
「和実さんをどこまでも追いかけるわ!」(だったと思う)
若菜さんはその後、何だか乱れた姿で登場し、和実を脅す道具として川島に使われ、だまされて殺されます。あ、なんか適当に説明してしまいました…。
「私、日本からパリ、上海へと和実さんを追いかけたわ…」
そんな説明はいいから「死んでも追いかけるわ」くらい言って欲しかった気がしますが。
哀れな人です。最期、和実の腕の中だったことが救いかもしれません。
夏河さん、キレイな方なんですが…
普段やっていらっしゃるキャラとあまりに違うため、なぜかドキドキしてしまったのでした。すいません。
凛麗河(美鳳さん)
川島の部下。実は和実に好意を持っておりました。でも自分の想いは報われないものと知っており、ずっと胸に秘めています。健気です。
ジョセフィーヌに和実から託されたブルーダイヤを届けるという、大事な役目をおおせつかいます。
弟くん(明日海りおさん)との姉弟っぷりも良い感じです。
そして忘れちゃいけない。
ケビン(月船さん)
ナチスの党員。パリで和実と一緒に活動していました。友人のようです。が、絡みが最初しかないので、和実が何故そんなにケビンの心配するのかよくわからないのでした。すいません。
ポーランド人の彼女と恋に落ちますが、戦争相手の国の人間と親しくすることを、ナチスの上層部は許しませんでした。仲間と思っていた人に裏切られて彼女を殺され、ケビンも拘束されてしまいます。しかし、復讐心に燃えたケビンは脱走し、ナチス上層部の殺害を企みます。
前髪…前髪がステキなんだぁ~。
1幕の固め前髪も良いんですが、2幕の乱れ前髪の色っぽさと言ったらもう。
もっときりやんとムンムンする役かと思いきや、そうでもありませんでした。
和実カップルとの対比とか、何か効果を狙っているのだろうとは思うのですが、どうも唐突すぎて…。対比にしてはちょっと違うのよねぇ…。
登場される場面は確かに魅せて下さったのですが、物語的にどういう役割なのかは実はよくわからなかったり。うぅ、どなたか教えてください…。
ここからつらつらと。
楠さんはジョセフィーヌのフィアンセ役。
おお、歌っていらっしゃる…。優しい男のフリをしています。
この男がまたワケわからんのです。
最後、物分りが良すぎるところがまた。その心境大幅変化の要因は一体何なのだ。
もう年取っちゃって情熱が無くなってしまったのでしょうか。ヒィ。
楠さん、こういう優男っぷりもステキなんですが、「血と砂」でやったガラベエトオのような、ちょっとニヒルな役をまた見てみたいなぁ…。
「薔薇の封印」の若者も良かったのであんな感じでも良いです。…もう何でも良いです。お姿見られれば。
エメラルドタブレットにブルーダイヤですか。
齋藤先生は、このような命なきものに魂宿らせる(?)のが好きですな。魔性の剣とか…何でしたっけあれ。そう、ロマンツェフ・レポート。
こういう話の鍵を握…ってんのか何なのかよくわからないがとりあえず重要そうな香り…のアイテムは、体内に潜む冒険心をくすぐるのでしょう。
私も勿論心躍りましたよ。一体何が起きるのかと。
和実さんのお付きの大門さん(真野さん)
一応副官として付いているのでしょうけど、やることと言えば上司の女の処理ばっかり(笑)なぜなら上司は始終女のことを考えているからです。それでも大門さんは中尉が大好きです。齋藤先生と言えば、必要以上に男同士がムンムンするのが風物詩なのに(日本語がおかしい…)、今回男女でハッピーエンドなんて珍しいじゃねーの、と思っておりましたが、考えてみれば大門さんと相当親密な関係になっていたようだと思い直しました。やはり齋藤先生はこうでなくては(滅茶苦茶…)