* 雪組 / 朝海ひかる・舞風りら・貴城けい / 日本青年館 / 2005-04
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マニアックばんざい!
和物の雪組…ですなぁ、とつくづく。
大野先生脚本の作品、観劇するのは実は初めてな気がいたします。
何故かというと…えーと、今まで内容に興味があまりもてなかったというかゴニョゴニョ。
でも今回は、何といってもカゲの目的は「柊さんを見るのだ」であったりするわけです。エヘ
さっきから意味なくごまかしてばかりですね。
内容は、最初は人名やら何やらかんやらたくさんでてきて、私の頭は序盤で早くも飽和状態に陥りそうでしたが、コムちゃんと柊さんが語らっている場面をみたときから凄まじい集中力が発揮されました。えーと、ともかく内容というと
時の横暴な将軍に耐えかね勢いで殺っちまった
↓
誰もあまり幸せになってない、そしてすれ違う兄弟の心(涙)
という展開でございます。相変わらず横暴なまとめ方です(本当に理解できているのかしらワタシ) お家の事情とか南朝の血とか穏やかな恋心とかが絡み合って奥深い物語になっているのです。ちなみにチラシに書いてあるあらすじとは全く違いますのでお気をつけくだされよ(笑)
内容もさることながら、何がすごいかって、時代考証と登場人物に関する並々ならぬこだわりっぷりですよ。さあさあパンフを見てみるが良い!マニアならではの構成ですよ。マニアとしては説明せずにはいられないのです。「私はこれこれこういった経緯でこの人物を設定するに至ったのだよ」と万人にアピールせねば気がすまないわけですよ(なんだか大仰に書いてしまったわよ)
浜松中納言(朝海さん)と式部卿宮(貴城さん)
兄である宮様、そして義理の弟である中納言どの。
あまり会話はなさそうな兄弟なんですが、心の中では大切に思い合っているようです。
宮様は少年時代に時の暴君義教公に見初められ、…なぐさみものにされていたのであろうか(ストレートな)。
ともかく、その美しさで義教の悪政をのりきってきた人物なのですよ。そして自分でもそれをよくわかっていて、自分を犠牲にして弟妹たちを守ろうとがんばっていたのですね…。でも、大切な人に気持ちを素直に見せるのは苦手のようで(確かに小さい頃からこんな生活していたら、どこか歪んでしまっても不思議ではない)、結果は自分の望んだ形にはならなかったのですよ。切ないですなぁ。でも計画段階のときに既に、何か噛みあわないものを感じていたのではないかと思います。そんな焦燥感のようなものがじんわりとにじみ出ていてすごく良かったです。貴城さんは陰があるキャラのときにとても良い味出しますなぁ。なんとなく、日本海の荒波の飛沫を身に受けつつおでんの屋台で熱燗をちびちびやっていて欲しい感じです(そんな場所に屋台は設置しません)(というかもっと高貴なイメージでお願いしますよ)
そして中納言どの。
「兄上!」呼びに激しく反応させていただきまする! スサノオのときの暑苦しく燃え盛る若者ぶりもたまりませんでしたが、このような「育ちの良いおぼっちゃまでござります」的コムちゃんもステキですね! 丁寧語使いが更にステキ色を濃厚にしています。
さて、でも彼は血統の差に遠慮しているのか、少々消極的なのです。内心では色々と考えつつも、言葉にはせず穏やかに見守るのが彼の性格というか性質というか心がけというか。そのせいで、かなりの後悔をすることになってしまうのですが。
立ち回りのところが格好よかったです。
大君、二の宮(舞風さん)
二役。前半は、中納言どのと心を寄せ合うお姫様(式部卿宮の妹)、後半は南朝の血をひく宮様。
儚げな様子がとてもよかったのではないかと。中納言と大君2人が舞台に居るときの、穏やかな空気が好きですな。二の宮様は少年役なのですが(実際は違うのだけれど)、扮装がとてもかわいかったです。
足利義教(一樹さん)
時の将軍。かなり勝手な横暴な人物であらせられた模様。彼に嫌われてしまうと如何に由緒ある家でもひどい仕打ちを受けてしまったりするのです。おーこわ。
しかも美少年愛好家という現代ではあまり大きな声では言えない嗜好をお持ちなのです。そう! 彼は美少年が好きなのだよ!(何度も言わんでよろしい) 怯える目つきがたまらないそうですよ。
楠木二郎正頼(未来さん)、菊理御前(麻樹さん)
将軍暗殺計画のときに味方になるご夫婦。
未来さんは、ホントさすがの未来さんですよ。強いな~!
この方の場違いなほどの濃さが、最近好きでたまらないほどです(笑)
しかも最期、
「私の命は誰にもやらん!」
と叫んで自らの腹に剣を突き立てて自害するのですけど、そのまま客席睨みつつ立ったままなのですよ! すごい、武将の鑑です。
そして奥さんの菊理さん。武将なので立ち回りしまくるのですけど、とても格好良いのです。
衛門督(柊さん)
中納言の友人。…友人ですよ友人! 中納言と肩組んだり会話したりしているぅ~ しかも序盤、コムちゃん貴城さんと3人で踊ったりなんかして! ヒィ! これは夢か~ 夢なのか~~
えーと、このお3人deダンスの前に、プロローグで武士姿の人がいっぱい出て来て舞うのですが、そこでは白地に濃紅の柄という少々目立つお着物を着て、ぶんぶん剣をふりまわす柊さん! ヒィ! 無理だお前のその細腕では!(←一度言ってみたかった)
と、こんな感じで初っ端から少々錯乱状態だったのですが。
衛門督は中納言の友なのですけど、式部卿宮に「将軍暗殺計画が成功したら大君やるぞ」と言われてフラ~と計画に加わってしまうのです。でも、中納言には内緒のはずだったのだけど、何かおかしいと感じた中納言に詰め寄られてあっさりと吐いてしまいます。よわー!(愛) そして、決行時に斬り合って、怪我をしてしまう衛門督さん…。もとがよわよわキャラですし、そのあと大いに反省したようで、中納言に謝る彼なのでした。でも実はだいぶ重傷だったらしく、中納言と会話している途中で息絶えてしまいます。嘆く中納言どの。中納言どのは彼の転生を願って弓を引きます。うぉ~ ええ友人じゃないですか! 息絶えた衛門督はそのまますておかれました…。その体勢すごいつらいのではないか? とヒヤヒヤしました。首大丈夫かな。
さて、前半はこのように私の心に爽やかな愛とツッコミを残してくださったラギ君でしたが、後半は一介の武士となって幾度も幾度も斬られに登場です!
それもまた楽しい。人数少ない舞台の宿命なのですが、1つの場面で何度もやられてしまうんですよねー!(愛) しかも腕をとられて顔を歪める、というシチュエーションが数回ありました。あぁ~ その顔さっきも見たよ! 着物はプロローグで着ていたものと同じなので、「来た来た」「また来た」と見つけやすくて非常によろしゅうございました。
あー楽しかった。
なかなかおいしい役だと小耳に挟んでいたのですが、まさかこんなに出番があるとは思わず嬉しい悲鳴です。こんなにセリフあるの初めてじゃないのかしら。本公演での活躍も増えると良いなぁ。今度は歌も聴いてみたいなぁ。
ぴょぴょんがぴょん(愛さん、天勢さん)
実は物語の展開に深く関っている方なのですが…(終盤で突然、「おお重要キャラだったのか」と気付かされる)
彼女たちといえば、あの後半のお着物ですよ。どうしちゃったんでしょうねアレ。兎の一族の猿楽師なんですが、勝負服(?)はウサギ柄のお着物なんです。しかもウサギはウサギでもファンシーうさちゃんなんです。平たく言えば安っぽ(モゴモゴ) あとぴょぴょんがぴょんの歌もどうすれば良いのだと少々動揺してしまいましたが、こういう展開は宝塚には良くあるものだったと思いなおしました。
天勢さんの娘役歌は初めて聞きましたが、綺麗でした~。
兎の一族のほかに狐の一族もいるのです。
私イチオシの麻倉ももこ嬢は後半、狐の一族として、なんと懐かしのシッポアクセサリーを腰にあしらっておられました。それはオシャレ心なのか? それとも静電気防止なのか!? 男性陣は3個も装備していてツワモノでした。
前半は猿楽師として出ていましたが、そのときもかわいかったですな~。今後も注目していきたいと思います。
あとは企みお姉さまの美穂さんと有沙さんも良かったですな。おーおー女の世界ってホント恐ろしいわ。日野重子役の花帆さんは幸薄そうな感じが良かった(褒めているつもり…)。
赤松家の若様の安城さん! 今回見納めだ~と思って追っかけました。綺麗な顔だなぁ… これだ最後なのだと思うと寂しいです。気の弱い若様ぷりがステキでした。赤松家の武将の悠さん。和物といえば悠さん、というか悠さんといえば和物というか。怖いくらいにはまる武将姿でした。後半のキズモノ悠さん(微妙なネーミング)もステキでした~。
中君の山科さん。ホントかわいいわこの方(笑) 最後に一曲歌っていました。
舞台背景の中央の大きな月が印象的でした。あと咲き誇る藤の花。
不思議なほんわかとした余韻が残る物語でした。決してハッピーエンドではないのですけどね。
物語説明がまるでなってないですが、勘弁してくださいね…