* 花組 / 春野寿美礼・ふづき美世 / 東京宝塚劇場
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むしろロドリーゴの幸せを祈りたくなる不思議な物語
はい、見てきました。
お衣装ステキだし、(たまに節約っぽい場面もあるが)舞台装置もとても美しく。
なかなかにドラマティックな展開で。
アンリエッタ(ふづきさん)が祈りを捧げた途端、稲妻ビシャーン! 窓からヒーロー登場! …の場面なんて、血わき肉躍る展開でしたわよ! そして、しかも最後はハッピーエンド!
……なのですが、この釈然としない気持ちは何なのであろうか(笑)
それは、ヴィットリオ(春野さん)が、貴族になることで事態を解決したというところが問題なのだと思います。しかも、まあもともと貴族の血をひくお方ではあったわけですが、何となくタナボタ的な幸運。こういう展開にするのならば、ニコラら平民たちをあそこまで詳細に描くことはなかったのではないでしょうか? 貴族の世界だけで何のかのとやっておけば良かったのではないかと思います。だって、ニコラ、かわいそう… そしてルチアがかわいそう……(無駄に感情移入)。
話を戻して。平民の事情もここまで詳しく描くのならば、ヴィットリオが貴族になるのではなく、アンリエッタが平民になる方向で行った方が余程観客の共感を得られるのではないのかしら。孫も(ひ孫でしたっけ?)、カネにものをいわせて恋人を救うのですが、それは自分が稼いだ金ではなく貴族である実家に用立ててもらった金なわけですよね? うーん、やはり突くべきツボがずれているような気がします。
ヴィットリオはもともと平民の世界で育った人ですし、これから議員(でしたっけ?)になったらシモジモの方々のことをちゃんと考えて活動してくださるのだと思うので、まあ、ニコラも救われるのでありましょう。ぶつぶつ。ニコラ、ニコラァ~~。ルチア~~。
物語。
ヴィットリオさん、なかなかに出来る男なのですが平民なので、アンリエッタが好きでも結婚許してもらえない。厳しい世界なんです。でも、上官から「(上官の)フィアンセだ」と紹介された人を奪おうというくらいなのだから、もうちょっと後ろめたそうにしてもいいのではないですか?(笑) やたら堂々としているのがサスガです。アンリエッタとしては、ロドリーゴにはそんなに強く惹かれていないみたいだったので問題ないのかもしれませんが…。
例によって(宝塚お得意の突発的フォーリンラブ)、いつの間にやら強く愛し合ってしまったお2人。アンリエッタは3姉妹の長女なので、家の跡継ぎなのですな。お父さん猛反対。前途ある青年は辺境の地へ左遷です。ポイッと。
嘆くアンリエッタ、「あのお方に会いたい!」と祈りを捧げたとたんに稲妻が! 窓がガバッと開いて、マントを翻したヒーローが登場です。す、すごい演出だ! 宝塚はこうでなくてはね!
さて、ここで束の間の再会を楽しむはずが、熱情を抑えきれなくなった2人は……最後までやってしまいます(もうちょっと言い方はないのか)。ベットの脇に立ち、ガウンの前をはだけて誘うってなかなかすごい女性ですね(笑)
さて、そのあと色々あって、ニコラ(蘭寿さん)らがアンリエッタの妹・マチルダ(桜乃さん)を誘拐してしまいます。自分達の主張を権力者に訴えるために、無茶な行動に出てしまったわけです。もちろん、うまくいくはずがないのです。島流しに遭っていたヴィットリオ(ニコラと同郷)は呼び戻されました。ニコラの、目に入れても痛くない妹・ルチア(桜さん)の訴えを聞いたヴィットリオは、ニコラ一味の隠れ家にやってきます。……ヴィットリオは政府軍(警察?)につけられていて、あっさりとニコラたちは包囲されてしまいます。
「尾行していたなんて、卑怯だぞ!」
とヴィットリオさん訴えますが、……アナタ、本当に出来る男なのですか?(笑)
ともかく、ニコラはひどい展開で軍に銃殺されてしまいます。展開が早くてよくわかりませんでしたが、かなりの理不尽な手だった気がします(ずいぶんとあやふや)。嘆き悲しむルチアの声が胸をうちます。
まーこんな感じで(いきなり省略しますが)、家のためにヴィットリオとの結婚をあきらめようとするアンリエッタ、それにショックを受けるヴィットリオ。
ヴィットリオには、昔お母さんが目の前で投身自殺してしまったという悲しい過去があります。「待つのです」みたいなことを盛んに口にしていたお母さんです。お母さんは待つことに疲れてしまったのです。自分を捨てて去ってしまった、貴族である自分の夫を待つことに。
お母さんは、ヴィットリオに「待つのです」と言って身投げしました。ヴィットリオはそれを思い出し、……待てば海路の日よりあり、ですか? 待つことにしたのですな。で、タナボタ式に萬さんから連絡があり(まあ、萬さんが登場した時点で、彼が父親なのだなとは読めましたよね~)、結末に至ると。
うーん、やっぱりアレですけど。
パンフには、「身分の差を越えた新しいカップルを祝福!」みたいなことが書いてあるので、まあ、その考え方をすれば納得できる…の、かしらね? でもそのあと、やっぱり貴族として暮らしてるじゃないの! 子孫は「家を守る」だの「跡取り」だの盛んに気にしているし。しかもニコラを無念の死に追いやった原因の1つとして、貴族社会も含まれるのではないかと思うのです。何だか、何だかなぁ~。どなたか、「ニコラも救われている!」と思えるような解釈を私にください~! とにかくニコラが! ニコラが!!
さて、この物語で報われないキャラの双璧は、ニコラ、そしてロドリーゴ(真飛さん)です。
ロドリーゴ、こんなに好青年なのに!
シチリアの花祭り(でしたっけ?)の場で、ヴィットリオと一緒にいるアンリエッタを見たときのロドリーゴの姿が切ないです! は~、報われないってステキだな!(←ん?)
最後、(多分)男泣きしたいところをこらえて、
「きまったぜ!(心の中で号泣)」
と去っていくロドリーゴの横顔が居た堪れない!(愛!)
すっかりロドリーゴの虜です。私、真飛さんに心奪われるとは思わず人生を生きてきたのですが…(ガクガク)。ど、どうしよう。星組のときは、ステキだなとは思えど心奪われることはなかったのに~。この品がある野郎っぷりにイチコロです。(←こんな表現しかできず申し訳ない~)
以下気付いたことなど。
ヴィットリオ・F(彩吹さん)と、ジュディッタ(遠野さん)。
「おはよう、お寝坊さん」!!!
お寝坊さん! お寝坊さん!
えー、えーと。ヴィットリオのひ孫とその恋人、ですか。おばあさんが物分り良い人で良かったですね…。幸せになってください。
ルチア(桜さん)。何ですか、彼女は妹専科なのですか。個人的には姪というのも捨てがたいですけどねー! 遠すぎず、かといって近すぎもしない関係っていうのが。でれでれ。(何の話だ) とにかくかわいかったっす。
アンリエッタは、お衣装がとても美しかったですなー。キャラクターも合っていたのでは? 今まで見たなかで一番良かったかも…。マラケシュの役も好きでしたが。ただ、お祭のときにスケスケ(笑)ドレスだったのはビックリしましたけど。いきなり勝負服か? と思ってしまいましたよ。(強烈なものでは全くなかったのですが・笑)
子供ヴィットリオ(野々すみ花さん)がかわいかったですなー。子供っぽかった。あとは、紫峰さんを必死で探していたのだけどなかなか見つけられず。残念無念でした。
何となく、というか明らかに報告がシリキレトンボなのは、ご容赦くださいまし。
ひとまず今後の予感としては、遠野さん異動後、花組の主食は真飛さんになるであろうということです…。(個人的に驚きの展開)