「堕天使の涙」大劇場公演の感想。
星組といい雪組といい、何故か大劇場ペースで見ている私。関東在住なのにおかしいわね
「堕天使の涙」。
全体を通しては、あまり「スバラシイ!」とは思わなかったのですスミマセン。
でも、「この場面のためだけに何度でも見たい」と思える場面がありました。
それは、リリス(舞風さん)とお見舞いにきたルシファー(朝海さん)が会話する場面と、リリスのもとに兄と両親がくる場面と、ルシファーとリリスのデュエットダンスの場面です。
初見のときってあまり泣かないのですが(話がよくわからないから)(……)、今回は気付かぬうちに涙が出ていました。リリスのセリフ1つ1つが、心に響くのです。私は聖書は読んだことないし、神とかよくわからないのだけど、リリスが神々しい光を放っているような印象すら持ちました。
特に、2人のデュエットダンスが、たまらないです。何か説明したいと思えど、何を言っても私の言葉では安っぽくなってしまいそうです。
リリスは、ルシファーのことを「光の天使」と言ったけれど。
ルシファーとリリスが2人で光をつむいでいるような、心が浄化されるような、雰囲気を持つ場面でした。ああ、やはり、何と言っていいのかわからない。
舞風さんは、このお話では出番が本当に少ないのですが、この場面を見た後は、彼女が主役のような気さえしてしまいます。この作品で退団、本当に良かったなあと思います。
ここから舞風さん語り。
舞風さんは、花組に居た頃は実はあまり好きではありませんでした(ぐわーん)。確かにダンスは上手いのかもしれないが、個人的に丸い娘役が好きだったのと(単にオヤジ趣味)、あと声の出し方があまり好みではなかったのですな。ふわっと落ち着いた声ではなく、なんかキャピキャピ(笑)しているというか…。雪組のトップ娘役に内定したとき、「本当に大丈夫なのかい」と失礼ながら思ったものでした。博多座の「あかねさす~」(花組の、異動直前の公演)を見たときも「ううむ…」と…。本当に申し訳ないことです、へこへこ。
しかし、コムちゃんのお披露目公演を見たときに、少し考え方が変わりました。正直、お芝居の舞風さんは「ううむ…」でした。でも、ショーでコムちゃんと踊っている舞風さんを見たときに、「いいんでない!」と思ったのでした。特に、フィナーレのピンクのお衣装のデュエットが良かった。つい舞台写真を買ってしまったほどです。
その後、私の中の舞風さん株はグゥングゥンと上昇していきました。特に好きなのが、「スサノオ」のイナダヒメと「タカラヅカ・ドリーム・キングダム」の夢の城の場面(花嫁人形が変身したあと)です。イナダヒメは、健気さとスサノオにたいする母性がすごく良くて、滅茶苦茶に惚れております。ドリキンの花嫁人形は、ふわふわほんわかなイメージの舞風さんの、ギラーンな部分(もっと解り易く説明してください!)がすごく良かった。花嫁人形(と愛さんの歌)が見たいがために、苦手な(おっとっと)芝居をガマンして2回見に行ってしまったのですよ。
トップ娘役になって、劇的な成長を遂げた人なのだなあ、と。
そして、最後がこの役で本当に良かった。集大成にふさわしいのではないでしょうか。
……で、物語の印象としては。
幕開き、やたらに耽美! ステキじゃないの!
お話もなかなか面白い。ひきこまれます。ビジュアルも良い。
のだが、設定を生かしきれていないかな~という気はします。なんだか色んなところで中途半端。勿体ないです。
感じるのは、キャラ設定がちょっと弱い、ということ。
コムちゃん、堕天使なのになんか人間臭いのですよねえ。なんとか人間のことを知りたいと思う堕天使。長い年月の中で、人間臭くなっちゃったのかもしれないが、なんか…フツーの人でないですか。人間に憧れている(と言ってしまっていいのかな)から人間臭くていいのかしら。でも、堕天使ならではの苦悩(?)というか、神への愛と憎しみで葛藤するところがもうちょっとあればなあ…と勝手ながら感じました。多分、最後がなんとなくギャグになっちゃっているのも(笑)良くないのではないかと。個人的には、光のパドドゥで終わりでも良かったのではないかと思います。その後にジャン=ポール(ミズさん)と会話しちゃったり光のお立ち台に乗っかっちゃたりするからおかしくなるのだ。なんか俗的になってしまうというか…。もうちょっと「実はこの世の人ではないのさ」的な去り方ではダメなのですかね…。まあ、最後には「光のお立ち台、ステキ!」になっちゃうのかもしれませんが。
他の登場人物、ジャン=ポールも、親を憎んでいる放蕩振付家…のわりに、飲んだくれ方があま~い! とか、他の方々も、もっと強烈にやっておくれ! …とか。勝手な言い草オンパレードとなってしまい申し訳ないが。
ぼろぼろと言ってしまいましたが、私は、この作品好きです。
「光のパドドゥ」を見せてくれてありがとう、といいたい。
そして、この「光のパドドゥ」のために、東宝でもう1度(といわず2度でも3度でも)行きたいなあと思います。