* 雪組 / 朝海ひかる・舞風りら / 初風緑・水夏希 / 宝塚大劇場 / 2004-04
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良くも悪くもキムシン作品。コムちゃんが超ハマリ役。特出の初風さんの慈愛お姉さまっぷり、水さんの妖艶えろへびっぷり、壮さんの意図イマイチ不明美麗兄っぷりもたまらん感じです。民衆役の扱いは、賛否が分かれるのではないかと思う。
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古事記が題材のお話。
神様たちの行動にイロイロ不満はあれど怒ってはいかんのです。
神様ですからね。
主要メンバーは、
スサノオ(朝海さん)、姉のアマテラス(初風さん)、兄の月読(壮さん)(なぜ彼だけ漢字表記なのかは謎)、ヤマトの民の長、アシナヅチ(未来さん)と末娘のイナダヒメ(舞風さん)、八百万の神のアメノウズメ(音月さん)とタヂカラオ(天希さん)。そして、えろ悪役のアオセトナ(水さん)。
プラスその他大勢(ひーー)
出だし。
導入部分はスサノオの兄の月読さんが担当です。
「よっ」と親しげに挨拶され、朗々と歌っていらっしゃいました。
かなりおいしい役どころでホクホクです。
お姿に見とれてしまい、セリフや歌詞の内容をほとんど聞いていなかったのでございます…おろおろ
展開がすでにあやふやですが、スサノオ登場。
彼が何の神様なのかは物語ではよく分かりませんが、力の象徴とアマテラスもおっしゃっておりましたし、頼もしい将軍、といった趣なのではないかと勝手に予想。
彼は逆上すると理性を失って暴れてしまう困ったクセがあるみたいです。
姉と姉弟げんかをして、アタマに来て姉に暴力をふるってしまったらしいです。
悲しみのあまり、天の岩戸に姿を隠してしまった姉のアマテラス。
アマテラスは太陽の神様なので、地上には日が差さず、ヤミに包まれてしまったのでした。
自分のせいだと反省しきりのスサノオは、暴力に嫌気がさしてどんよりしています。
そんなとき、兄の月読が、これを使えと剣をスサノオに押しつけてきました。
あまり気の進まないスサノオの前に、民衆(やたらいっぱいいる)に追われる親子が現れます。
おや? 登場順序は逆だったかもしれないです。
父親はヤマトを治める長でした。
ヤマトにはヤマタノオロチという恐ろしい大蛇が住んでいて、毎年いけにえを捧げるきまりになっているそうなのです。
アシナヅチは毎年自分の娘を1人ずつ差し出してきましたが、もう残っているのはイナダヒメただひとり。
民に「今年は自分の娘ではなく、他の人の娘を差し出してはもらえないか」と頼んだところ、誰もが「いやですよ」「何ふざけたこといってるだ」と拒否したというのです。
アシナヅチは「人は自分が良ければいいんです…」と嘆きます。
が、アシナヅチは自分が末娘を差し出したくないから他の人に悲しみを負わせようとしたのであって…そりゃあ今までさんざんつらい思いをしてきたのは分かるけどさ…、とツッコミたくなる曲がった根性の私。
ま、いいさ。
とにかく、アシナヅチは気の済むまで歌ったあと、「ヤマタノオロチを退治してくれ」とスサノオに頼み、息を引き取るのです。
いったんは悲しみに暮れる娘のイナダヒメですが、さすがアシナヅチの娘、立ち直りが早いんです。
「私は父さんの娘なんだ!」と力強く言い放ち、涙を流しつつ「泣くのはやめた…」と歌う姿は健気です。
そして、「ヤマタノオロチを倒しに行きましょう!」とスサノオを誘います。
しかしスサノオは、「えー、だって暴力使いたくないし」と気が進まない様子。
業を煮やしたイナダヒメは、「この軟弱者~!」と罵倒し、自分の首に剣をあてて、オロチを倒せないなら、自分は死ぬ! とスサノオを脅迫するのでした。
おっそろしー姫さまです。女は強いなぁ。キムシン作品の傾向ではありますが。
とにかく、自暴自棄になってしまったイナダヒメに向かって、スサノオは「お父上のご遺言を忘れたのか」とか寝ぼけたことを言ってます。
それならオロチを倒すように依頼されたのに渋っているキミはどうなんだキミは。
しかしイナダヒメは何か納得したようで、泣き崩れます。
スサノオは、自分が何故暴力を使いたくないのかという理由を語り始めます。
ここから思い出話です。
………。
ということだそうです。
…全然わかりませんね。
つまり簡単に言うと、自分の暴力が原因で姉がスネてしまったからだ、ということなのでした。その前にしょうもないケンカもあったわけですけども。
そんなスサノオに向かって、イナダヒメは言います。
「お姉さんを愛していたのね」と。
なんだか正しいような正しくないような理論ではありましたが、それはキムシン作品ではよくあることです。
気にしない気にしない(ひとやすみひとやすみ)
とにかくスサノオは心に響くものがあったみたいです。オロチ退治に行く決心をしたのでした。
…さて。
ヤマタノオロチがいるとウワサされる場所にいたのは。
アオセトナというカリスマ教祖みたいな暮らしをしているお方でした。
♪ 欲しいものを言ってごらん
♪ きっと願いは叶うだろう
おおお…だまされてツボとかハンコとか買わされそうです。
ただ、アオセトナさまは不気味なムードを出しつつも、妖艶で色っぽくうっとりしてしまうようなステキなお方なので(ベタ褒めさせてくれ) だまされても文句言いません私。むしろ民衆やヒメたちに混ざってよろめきたいと考えるおなごは半端な人数ではないというウワサです。
…えーと。
そんなところにスサノオとイナダヒメが毒気を抜かれた様子でやってきました。おっそろしいヤマタノオロチがいるかと思ったら、えろムードな(好きなのよ)カリスマさんが出てきたのです。
驚いたことに、ヤマタノオロチのいけにえになったはずの、イナダヒメの姉たちまでそこにいるのでした。何やらぽややんとしていて、様子はヘンなのですけど。
その場に集った民衆は、ヤマトに嫌気がさして集まってきた、ヤマトの民だとアオセトナは言います。そして、乱れているヤマトを立て直さないと、民たちを返すわけにはいかないと言うのです。
スサノオは、ヤマトを建て直すために、単身で帰ることに決めました。
そんなスサノオに、アオセトナはお酒を振舞います。が、そのお酒には(やっぱりというか何というか)毒が入っていたのでした。正しくは杯に塗ってあったということですが。
このとき、杯を抱えてニヤリと笑う沙央くんが凶悪でステキです(好きなんです)
さて、スサノオを毒殺した(気になった)アオセトナさまはゴキゲンです。
調子に乗って歌います。
♪ 1+1=2
♪ 2×2=4
♪ 4×4=16
♪ 16×16=256
♪ 256×256=65536
♪ 65536?65536=120000000
何だ何だ。計算機理論の基礎ですか。
詩劇だと銘うっているのに、詩的センスのかけらもない歌詞ではありますが、電卓を叩く(或いは必死に筆算に挑む)キムシンを想像すると楽しくなってきます。
最後の計算はとても難しいです(どうすりゃいーのだか)
とにかく、アオセトナさまが言うには、自分はヤマトに滅ぼされた国々の怨念(青い魂というのだそうで)で、青い魂に身をゆだねると
♪ とろけてしまうのよ~
♪ しびれてしまうのよ~
♪ とっても気持ちいいのよ~ (姉たち・談)
んだそうですよ。テクニシャンなアオセトナさま。
今すぐにでも施術(?)していただきたい程の心意気ですが(私が)、イナダヒメはイヤそうです。でも、アオセトナさまは強引なプレイがお好みのようで、イナダヒメの着物をビリィッと引き裂くなどというご無体なことをなさるのでした。
そしてキメゼリフ
「おまえはオレの慰みものだ~~」
悪役街道まっしぐらですが、そんなお姿もステキ♪ と思ってしまう私は、既に青い魂に支配されてしまっているのでしょうか。
そんな感じでご満悦なアオセトナさまでしたが。
悪は永くは栄えないものです。
我らがヒーロー、スサノオ復活。やはりこうでなくては。
慌てたアオセトナさまは、ついに切り札、ヤマタノオロチを登場させます。
このヤマタノオロチ、民衆がそれぞれ目や顔やウロコを模した物体を持って表現しているのですが、「おお考えたなぁ」という感じでスナオに感心いたしました。
なんとか8つの頭をやっつけたスサノオですが…そこに現れたのは、姉のアマテラス。
「あなたはまだ暴力をふるっているのですか」とスサノオを非難します。
シスコンな(言ってしまった…)スサノオは、「なぜここにいるのか」と疑問に思いつつも、アマテラスの言葉に衝撃を受け力が抜けてしまいます。
よくよく見ると、アマテラスはと~っても不健康そうなくちびるをしているので、明らかに怪しいのですが、スサノオはショックでそんなところは見えておりません。しかし、イナダヒメは「何かおかしい!」と感じたようです。スサノオの剣をとって、アマテラスに斬りかかろうとします。
咄嗟に剣を奪って、イナダヒメを切り捨てるアマテラス。
それを見て、突然元気になった(?)スサノオは、アマテラスを責めます。
アマテラスの剣vsスサノオの腕対決です。
スサノオは何度も斬られますが、最後にアマテラスの首をつかんで締め上げたのです。
そのアマテラスは、実はアオセトナが化けた姿でした。アオセトナは、捨てゼリフを吐いて去っていきます。
ヤマタノオロチ+アオセトナを倒したスサノオでしたが、自身の命も尽きようとしていました。
都合よく登場する兄の月読。
月読は、八百万の神からの要請で、スサノオの死を望み、剣をスサノオに渡したのです。そして、スサノオの死を見届けるために、ヤマタノオロチとの戦いを見守っていたのです。
「オレの兄弟…!」と嘆く月読の姿は胸を打ちます。
…が、よく考えると。
アナタはいったい何がしたかったんじゃい、と問いたくなってしまうのです。
月読は、弟の死など望んではいなかったでしょう。ただ、ヤマトの国の平和のためには、とんでもない性格のスサノオは存在すべきではないと説得され、自分でもそう感じたのだと思います。彼はヤマトの国の神ですから、私情より国のことを優先せねばと考えたのでしょう。まあ、そういう風に考えると「八百万の神は、私にスサノオの最期を看取るように求めたのだ(悔しげ)」というセリフは責任転嫁みたいで少々納得いきませんが。ヤマトの国のためには…という想いと、弟に対する想いと、アンビバレンツなもののハザマで苦悩していた月読が、願望なり思いやりなりをこめて言ったセリフではないかと強引に解釈。…ムリヤリかしらね。
そう考えると、最後の陽気な舞についても理解できる気がしませんか?
例えるなら、血縁の出来の悪い部下を持ってしまった中間管理職の悲哀、といったところでしょうか。
会社のためにはリストラしたいが情がジャマをする…みたいな。(何か間違っている気もしますが…)
でも、真実を知ったスサノオの、「虚しい……!」といううめきはやりきれないです。
そしてスサノオは、
(1)イナダヒメの命を助けること
(2)自分の亡骸から笛をつくり、天の岩戸の前でイナダヒメにその笛を吹かせること
を月読に託し、息を引き取ったのでした。
八百万の神が集う、天の岩戸前にご案内。
そこではアメノウズメを中心に歌って踊って、なんとかアマテラスの気分を盛り上げようと必死です。
月読が、イナダヒメを伴って登場。
彼は、スサノオが死んだことをまだ公表していません。
イナダヒメの笛と、周囲のお祭り騒ぎのおかげで、ついにアマテラスが岩戸から出てきました。
「スサノオの声が聞こえたわ」とアマテラスは言います。
それは笛の音だったのですが、アマテラスはスサノオ本体を探します。
見かねた月読は真実-スサノオが死んだことを告げました。
ショックを受けたアマテラスは、
「皆さんはそれをだまってみていたのか」と責め口調です。
…10年も隠れて現実逃避していた自分のことは棚上げですかい。
とにかく、出来のわるい弟ほどかわいいのか、かなりブラコンのご様子。
これでは月読の苦労も絶えないわけですよ。
勝手きままなお姉さんは、スサノオを生き返らせます。
「私もずいぶん悩みました…」
…ん? ずいぶんあっさり決断したように見えましたが。
神の時間にしては長時間だったのかもしれないし、超高速でアタマを回転させていたのかもしれません。何て言ったって超越した存在でいらっしゃるので。
姉の力によって復活を遂げたスサノオさん。
荒れ狂います。
命をもてあそばれたとご立腹。またもや剣をブンブン振り回し、暴れまくり。
でも、彼は自分のやるべきことをちゃんと分かっていました。
自分の力は暴力で周囲を破壊することではなく、ヤマトに秩序をもたらして国を建て直していくことだということが(このあたりはかなり創作したので信じないでください)
そして、自分の精神的な力になってくれたイナダヒメを妻に迎えることに決めたのでした。
「おぬし、人間と通じたな!!」(ウラノス@LUNA)
などと怒るヒトはいないので安心してください。
おめでとーございます、ということで大円団。
八百万の神のお祭りダンスで閉幕です。
主要メンバーについて簡単に。
スサノオ(朝海さん)。
これがまた、大層ステキな神様で…。
「一人称わし」やら「男の哀愁」やら、「どうも持ち味に合っていないのではないか」と感じる役をあてられてきたコムちゃんですが、3作目にしてハマリ役に出会えたようで非常に嬉しいです。
これはコムちゃんにしかできないだろうなあと。
ビジュアルからして素晴らしく似合ってますし、役柄も、いろいろと。
ひとりロッカーみたいなお衣装も不思議ですがステキです。
最初の白いお衣装も最後の赤いお衣装&トリートメントも好きですが、私は毒酒から復活してからの、ワイルド寝ぐせ(違います)なサイボーグ風お衣装が好きですな。
あの金色のケーブルがはみ出たような腕が近未来チックなのです。
ステキだわステキだわ。
イナダヒメ(舞風さん)。
強気で勇ましい姫さま。スサノオを罵倒する姿に惚れました。
力はスサノオに頼っていますが、精神的にスサノオを包み込むスタンスなところがたまらんのです。かわいいなあ。
舞風さんも、かなりなはまり役だと思いましたよ。
アマテラス(初風さん)。
おお…女性の声です。
慈愛に満ちた落ち着いた声がキレイでした。太陽神(ラーじゃありません)ルックもステキです。
アオセトナの化身で出てきたときの、不気味なアマテラスもかなり気に入っております。
アオセトナ(水さん)。
こ・これは…。
身も心も捧げたいヘビナンバーワンの座は彼のものです(何じゃそりゃ)
ポスターに載っているあのお姿で登場されるのかと危惧しておりましたが(だってさ…)ものすごいパワーアップしておりました。
ステキなのよ…ステキなのようううう
ネイルまでアオセトナ仕様で恐れ入りました。唇がゴールドなのもしびれましたわ…
ああもう何されてもいいわあああ
あオい タマスィイに支配されたいです。
月読(壮さん)。
こここここんな目立つ役とは思っておりませんでした
(いまだに「子を見守る親」心境が抜けないこまったヒトです)
役的には、行動に「ん?」な部分も多い月読さんですが、いいんだステキだから…
声落ち着いていて伸びやかになったし…
スサノオがお亡くなりになる場面の沈痛な表情もステキでした。
お衣装も似合っていたし… とにかく何もかもステキだったのでした
いまだにぽわわ~となっております。
ステキでしたわ~
アシナヅチ(未来さん)。
未来さんの特濃演技はいつもツボなのですがまたまた熱演で素晴らしかったです。
歌もさすがの貫禄。
でもおひげがわさわさと付いていたので、実は家に帰るまで未来さんだと気づかなかった…すみません…
アメノウズメ(音月さん)。
踊り子さんの神。スリット&ブーツで勇ましくたまにかわいらしく歌と踊りを披露します。ハジケっぷりが何ともかわいいのでした。
男なのか? 女なのか? どっちもできちゃうよ! だそうですけど。
スリットを直す仕草と髪をいじる仕草がチャームポイントのようです。
あとは…
もうその他大勢、としか表現できないのですけど。
作品としては好きなのですが、民衆が皆同じ格好というのは切なかったりするのです。
あまり似合っている人いない気がいたしますし(……)
舞台上は大渋滞なので、後ろの方の人はほとんどお顔見えませんし…
太鼓係の人の方が、おいしい役なのではないかと感じました。お顔見えますし。
主要メンバーがとても少ないので、本公演でも新人公演でも民衆役という人は相当いるのでしょうね。
宝塚の作品としてはどーかしら、と思ってしまうのでした。
そう言いつつ…やっぱり好きなのですこの作品。