8月末に観た、花組公演「ファントム」について。
私にしてはがんばって辛口です。批判的というのかも。
「花組ファントム最高!」の方には、少々ウムムな内容になっております…
いきなりちょっと後ろ向きで申し訳ないですが、私はこの物語がそんなに好みではないのですよ。
父の発言がズシーンときましてね。
父の行動もアレですしね。
でも、歌が大好きです。そして、大好きな場面も沢山。
以前宙組で上演したときは、歌を聴きたいのと、リシャール&セルジョの怪しい絡みとフィナーレのロケットガール・彩乃かなみ嬢の脚を見たいがために精力的に通った記憶があります。趣味を疑われそうな目的ですがお気になさらぬように。
さて、花組版。
宙組版と決定的に違うところは、ほのかに生活臭がするという点です。もっとうまい言い方があるのだと思いますが、今はこの表現しか思い浮かびません。春野さんの特徴的な歌い方が、そう思わせるのかもしれません。幕開き、オペラ座の屋根で独唱する場面がありますが、個人的には、スーッと冷え切るような、冷たい風が微かに吹き抜けるような、そんな雰囲気を期待してしまっていたのですよ。その場面、花組版では、えーと…。人肌よりは少々低めの温度という感じ。照明が赤かったからなんでしょうか。ん? 宙組版でも赤かったかしら。うう、わからん! とにかくまずそこで
「おお、全然違うなあ」
と、感じたのでした。
そのあとの生活臭場面は、エリックが従者たちについて
「彼らは元浮浪者だ」
だの
「ぼくが食べ物を与えてやらなければ生きていけないんだ」
というようなことを父に言う場面です。
従者たちが人間であることは知っていたけど、世の中にはもやっとごまかしておいたほうが良いこともあるのですよ。なんだかなあ。
しかも、働いていない(=金がない)エリックが、どうして食べ物を入手できるのか? それは、父が手配してくれているからなのではないかと思うのだけど。
うーん。
この会話のせいで、エリックに対してあまり感情移入できずに物語が終わってしまいましたっ!
ごめんよ春野さん!
前にも書きましたが、初演に思い入れがありすぎるのはいかんなという話です。
さて、それぞれについて語ってみますか。
エリック、春野さん。
先に書いたように、人間臭いというか…怪人としてのおどろおどろしい雰囲気はなくマイルドでした。ジョセフ・ブケーを殺害する場面が、ファンタジック(笑)になっていたのは良かったですな。
キャラクターとしては、エリックにはあまり合っていなかったような気がします。春野さん、「だってボク」なおぼっちゃまキャラは得意なはずだと思うのですけど、歌い出すと貫禄が出てしまいますねえ。父と2人の銀橋の場面では、「これでもかぁぁ」(ぐりぐり)という程に歌い上げていて、それは素晴らしい歌声だったのだけど、ユミコさんがだいぶ押され気味で…(あわわわ…) すんません、ここで泣けるはずが、泣けませんでした。
あと、撃たれても普通に歩き、追われても普通に歩くのは、えーと、いいんですか?(笑) 確かわき腹を撃たれているはずなのに、銀橋で普通に立っている春野さん。鎖でぐるぐるまきにされそうになっているのに、ゆったりと「縛られポジション」に移動する春野さん。確かパレルモでも、撃たれた子供にゆるゆると近づいていたような。…まあ、それでこそ春野さんとも言えるんですが(笑)、「ちょっとは急いでおくれ!」とか「ちょっとは痛がっておくれ!」などと思ってしまうのであります。
カツラは、心配していたほどではありませんでした。それどころか、いいじゃないの(ビックリ)と思いました(失礼なことをずけずけと)。フィナーレの、デュエットダンスのカツラはちょっといかがなものかと思いましたが…。いやいやいや、こうでないと春野さんを見た気になりませんものね!(笑)
桜乃さんとの並びは合っていたのではないでしょうか
クリスティーヌ、桜乃さん。
正直、前半はどうしてくれようかと思いました(笑)。しかし、ビストロの場面の、エリックの登場で不安げな表情がパァッと明るくなって、歌声が響き渡るところは、すごく良かったですなー。鳥肌立ちました。そのあと、本当に上手くなってましたよ。うむうむ、感動したわ。
フィナーレのソロは、またヨレヨレだったんですが…(笑)。それでも、「二都物語」のときに比べたら飛躍的に上手くなりましたよねえ。醸し出す雰囲気は良いと思うので、今後もがんばっていただきたいです。
キャリエール、彩吹さん。
父。元凶の父です。笑。
おひげ…。最初は違和感ありましたが、慣れました。序盤のソロが削られているのは何なのかーと思いましたよ。ユミコさんに歌わせないでどうするのだ。あの曲で、元支配人のオペラ座への想いが強調されて、そのあとの物語につながっていくと思うのですけどねえ。なくなっちゃうと、印象弱くなってしまいますね…。(くどくど)(わたくしユミコびいきなもので)
フィリップ、真飛さん。
サワヤカ~と思ったら結構男くさかった(笑)。あの、フィリップ1人で空回りソング(ビストロの場面のあとの、クリスティーヌにアピールする場面)は、英語の歌詞を日本語に変えたのですねえ。やはり、パリでアメリカンテイストは違和感あるからかしら。
メインで力尽きてしまった…。
あ、忘れてはならないのが、カルロッタの出雲さん。唸ります。上手すぎて。1人で芝居を締めていたような印象さえも。陰の主役ですね。あと印象的だったのは、メグ役の華耀きらり嬢ですかね。私はもうメロメロですよ。本当かわいいなあ。
花組、なんとなく「ハルノとその仲間達」みたいになっている気がするんですが。アブラハムには7人の子、みたいな…。ひとりはノッポであとはちびみたいな…。あ、みんな仲良く暮らしているから良いのかな? それでも、このあとユミコさんが異動して、えりたんがやってくるわけですが。真飛さんとえりたん、若手達で、ぐいぐい春野さんにせまるぐらい頑張って欲しいですな。